Kimagure EVA★Road 第10話 …
きまぐれエヴァ★ロード
第10話 紅茶はいかが?
晝ご飯を食べ終わった、少しだけ暑い春の教室。
今日も僕はぼけぼけと今日はどうしようかなんて考えていて。
(トウジ達とゲーセンってのもいいかもな‧‧‧)
そんな風に考えていたとき‧‧‧
「碇君、今日って時間ある?」
急に綾波からそう話しかけられた。
「うん、何の予定も入ってないけど」
「もしよかったら、あばかぶの手傳いに來てくれない?
今日はマスターが居なくて大變なのよ」
「あれっ、今日加持さんいないの?」
確かあばかぶって年中無休だったような氣がしたんだけど‧‧‧
「ええ、だから今日一日でいいから手傳ってくれない?」
僕としたら別に斷る理由もなく、いつもだったらお金を擴ってコーヒーを飲むのがお金
を って仼くのに變わるだけなので。
「別にいいよ、予定もないしさ」
「よかった‧‧‧それじゃ放課後よろしくね、碇君」
放課後、僕は綾波と一緒に急ぎ足であばかぶに向かった。
店に著くとすでに加持さんは店のユニフォームじゃなくて普通のスーツなんかびしっと
著丢んで、いかにもこれから出かけるって格好をしていた。
「おお、來てくれたか‧‧シンジ君まで、惡いね」
「いえ、べつにそんな事ないですよ」
こちらとしたらバイト料も出るし、綾波とは一緒だし、そんな惡い事なんてぜんぜんな
いんで、なんかこの言葉はちょっと氣恥ずかしかったりもした。
「後でバイト料はずむから‧‧今日はよろしくお願いするよ、それじゃ」
加持さんが出た後、お店のロッカーでエプロンに著替えて店の中に出る。
「ところで、どうして加持さんは出かけちゃうわけ?」
「ちょっとコーヒー豆と紅茶の葉っぱを買いに行くんだって。新製品をメニューに載せた
いからってことらしいけど」
コーヒー豆と、紅茶の葉っぱの買い出しね
確かにこの店は定休日がないから、こうやって誰かに店を任して買い出しに行かなきゃ
いけないんだろうな。
そんなわけでこうして、あばかぶの店內で仼いてるんだけど‧‧‧
とりあえずお客が來ない‧‧‧もう店に來てから30分くらい經つのに。
「ねえ、綾波‧‧‧いつもこんななの?」
「大体こんなものよ、お客さんが來る時間と來ない時間ってやっぱりあるみたい」
「へぇ‧‧そうなんだ‧‧‧」
「でも‧‧そろそろ誰か來る頃じゃない? さすがにお客さんも集まる頃だと思うけど
‧‧‧」
”からら~~ん”
綾波の言葉通り、ドアが開いてお客が入ってきた。
「いらっしゃーーーい」
反射的に挨拶をする。だけどそれは見慣れた人間だったわけで。
「アスカ‧‧‧」
「ぐーてんもるげん!! なかなか頑張ってるみたいね、シンジ」
アスカがどうしてここに來るんだ???‧‧‧なんて僕の心の內を讀んだのか。
「レイから聽いたのよ‧‧‧今日はシンジもあばかぶで仼いてるって」
そう答えた後。しっかりと僕の前のカウンター席に座って、見上げるような視線を僕に
送る。
「アタシみたいな可愛いお客が來て嬉しいんでしょ‧‧‧」
こっちをからかうようにアスカはそんな事を言う。
「な、何言ってるんだよ‧‧‧もう」
真っ正面からそんな事を言うんだから‧‧‧なんか恥ずかしくて自分の頰が赤くなって
るが分かった。
”からから~ん”
立て續けにドアが開いてまたお客が入ってきた。
「いらっしゃ‧‧‧‧」
そこまで言って僕の言葉が止まる。
「やあ、シンジ君。こんなところで會えるなんて何か運命を感じるよ」
天使のような屈託のない笑顏をしてカヲル君が店へとやってきた。
「ど、どうしてアンタがここに來るのよ!!」
例のホテル前での格鬥以來、アスカはカヲル君のことを目の敵にしている。
かなり興奮したような口調でアスカはカヲル君に詰め寄った。
「いや、ただコーヒーが飲みたくなってね」
笑顏を絕やさぬまま、普段と一緒の冷靜な受け答え。
いかにもアスカなんて相手にしてないといった感じだ。
「そんな顏してても、アンタみたいなのが裏で考えてくる事が一番分かんないのよ!!」
その言葉を無視してカヲル君は窗際の席に座った。
アスカもこれ以上何を言っても無馱と思ったのか‧‧‧
「シンジ、ブレンドをお願いね」
カヲル君を攻擊するのをあきらめて、オーダーを入れた。
「ちょっと待っててね‧‧‧今用意するから‧‧‧」
この店では作り置きはしない主義(加持さんが味にすっごくこだわっている)なので、
僕は容器の中でで泡を立てているお湯を取って、挽いたコーヒー豆に注いだ。
「はい、お待ちどうさま」
僕が出したコーヒーをアスカは、神妙な顏で一口飲み丢んだ。
「美味しい、シンジ!!」
「よかった‧‧‧」
正直うまく出來上がっていたか自信が無くて、こうして譽められたのはかなり嬉しかっ
た。
それに對抗するように、カヲル君もオーダーを入れた。
「それじゃ僕にも、ブレンドを おうか‧‧シンジ君」
「う、うん、今すぐ入れるよ‧‧‧」
一應今日はアルバイトをしているわけで、お客の注文には(例えそれがちょっとばかり
苦手な相手でも)應えなければいけない。
ただ、たてつづけに注文が入って、少しだけ焦ったわけで‧‧‧
決して惡氣とかがあったわけじゃないんだ‧‧‧
(‧‧‧ヤバイ、豆の量を間違えた‧‧‧)
それに氣づいたときはすでに綾波がお盆を持ってコーヒーを運んだ後だった。
「はい、どうぞ‧‧‧」
「それじゃ、しっかり味あわせて うよ‧‧シンジ君」
優雅な手つきで、カップを傾ける。
「ちょ、ちょっと待ってーーーーーーーーー!!!!」
僕が止めるのが少し れたのがいけなかった。
どうしたの‧‧‧という表情をしながらも、カップの中の液体はしっかりとカヲル君の
口の中に流し丢まれた。
「げほっっっ、げほっっ、げほっっ‧‧‧‧シ、シンジ君‧‧これは‧‧‧」
「ごめんよカヲル君、僕がいけなかったんだ‧‧‧」
僕の言葉の中にすまないという氣持ちを感じたのか、カヲル君は少し無理をしてでも、
なんでもないところをアピールしたいようで。
「いや、味は濃いけど‧‧‧‧‧‧美味しいよ‧‧‧」
カヲル君はそう言った。
だけど顏は青ざめているし、表情もこわばっている。
「いや、實に美味しいなぁ‧‧‧ははは」
無理が見え見えだよ‧‧‧本當に惡いことしちゃったな‧‧‧
‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧‧
アスカとカヲル君がなんとなく妙な雰圍氣を作っていたのか、他のお客さんがやってき
ても長居をせずにどんどん店を出ていく。
そして二人がやっと重い腰を上げた頃には、外はもうすっかり暗くなっていた。
「シンジ君、今度僕のためだけにコーヒーを入れてくれると嬉しいな‧‧‧じゃあまた明
日」
「それじゃ、バイト頑張ってね‧‧‧バイバイ、シンジ」
やっとアスカ達も歸ったんで、僕等は店を閉めることにした。
なんだかんだで閉店の時間を過ぎても居座ってるんだから‧‧‧あー疲れた‧‧‧
「ふぁぁ、おわった~」
「でもまだ掃除が殘ってるわ‧‧はいこれ」
綾波が僕にバケツとブラシを渡した。
「店の前の掃除お願いね、私は店の中を掃除してるから」
「うん、わかった‧‧‧」
店の外に出ようとしてふと視線を窗の外にやるとなんだか變な光景に出くわした。
なんか店の前で何かは入りづらそうにしている人がいる。
見かけは20代後半くらいでかなりの美人。
だけど態度がおかしいのが‧‧ちょっとだけ氣にかかるんだ。
「あの‧‧‧」
ドアを開けて店の外に出たら、いきなり向こうから聲をかけられた。
「この店に加持っているかしら?」
どうやら店のエプロンを付けている僕を關係者だと考えたらしい。
「は、はい‧‧加持さんだったらこの店のマスターですけど‧‧‧」
「そう、やっぱりね‧‧‧」
「あの~なんか用ですか?
加持さんだったら今丁度買い物に出かけて居ないんですけど」
「それじゃ‧‧‧ちょっと待たせてもらえるかしら」
「別にかまわないですけど‧‧‧」
彼女が加持さんの知り合いであることはどうやら間違いなさそうなので、閉店後だけど
僕は彼女を店の中へと招き入れた。
「碇君‧‧‧その人は?」
「なんか加持さんの知り合いみたいで‧‧‧店の外で待たせているのもなんだからね」
「それじゃ‧‧こっちで待っていて下さい」
少し考えた後、綾波は彼女をカウンター席の方に呼び寄せて、そこに座らせた。
「それじゃ、外の掃除の續きしてきて、私は店にいるから‧‧‧」
「わかったよ、じゃあ掃除してくるね」
僕は綾波に彼女のことを任せて外に出た‧‧‧
店の周りの掃除もすぐに終わって、二人を置いたまま歸るわけにもいかないので、カウ
ンターの中で加持さんを待ち續ける。
話をする氣にもなれなくて壁時計の音だけがやたらと耳に付く。
その時だった。
ドアに付いているベルがカラカラと音を立てて、店の中に誰か入って來たことを告げ
る。
加持さんが兩手一杯に紙袋を抱えてやっと歸ってきた。
「いや、なかなかいい品物がそろっていてね、 くなって惡かった‧‧‧」
笑いを浮かべて店に戾ってきた加持さんの表情が一瞬にして真劍なものに變わった。
「葛城‧‧‧」
「いやあ、日本に轉勤になっちゃった、あはは‧‧‧」
葛城さん‧‧と加持さんに呼ばれた女の人は照れくさそうな笑顏を浮かべた。
「連絡しないでごめんね、こんな突然押し掛けてきて‧‧‧迷惑だった?」
「迷惑なんかじゃないさ‧‧‧8年經ってやっと俺の前に歸ってきた‧‧‧何か言いたい
ことでもあるんだろ?」
確かにその通りで、日本に歸ってきたからといってその事を默っていても別に何の差し
障りがあるわけじゃない、それをわざわざこうして加持さんの前に現れたと言うことは何
か思うところがあってのことなのだろう。
「ええ、だって‧‧‧やっと決心が付いたから」
「そうか‧‧‧‧‧」
二人の間に少しの間だけ沈默が流れ、その後にゆっくりと葛城さんが口を開いた。
「ずっと父親の影を追いかけていた自分が‧‧許せなかったの。
でも今はもう違う、それが私の求める物ならば無理に否定をすることはないって思えるよ
うになったのよ。
だから‧‧‧あの時あなたから逃げ出した私を‧‧‧」
その言葉に答えないで加持さんは沸いたお湯を紅茶の葉に注ぐ。
「紅茶‧‧‧好きだったよな‧‧‧」
「ええ、今もそうよ」
そして出來上がった紅茶をそっと葛城さんの前に置いた。
何かとてもすがすがしい個性的な香りがそれからは漂ってくる‧‧‧
「普段店ではダージリンとオレンジペコ位しか置いてないんだ、
でも今日は何かこれが久しぶりに飲みたくなってね、それで買ってきたってわけ。
虫の知らせって奴かもな‧‧‧」
「アールグレイ‧‧‧あなたと暮らしてた時、あたしいつもこればっかり飲んでた‧‧覺
えてたんだ」
葛城さんは湯氣の立つ溫かい飲み物を、ゆっくりと口に含んだ。
「おいしい‧‧これ‧‧」
「‧‧‧俺はここでお前のことをずっと待ってたんだ‧‧‧だから許すも許さないも、お
前が歸って來さえすればそれでいい、そう考えてた」
「加持君‧‧‧今まで本當にごめんね‧‧‧でもこれからは‧‧‧」
そこまで見屆けてから僕たちはそっと裏口から店を拔け出した。
家に急ぐ暗い道を僕等は二人で步いていた。
その間の話題はやっぱりさっき見た二人のことにだった。
「加持さんが言ってた、學生時代の戀人って‧‧‧さっきの人だったんだね」
「素敵な人だったね‧‧‧それにあんなに人のことを好きになれるのって、なんだか羨ま
しい氣がするな」
「よっぽど加持さんのことを信じていたんだろうね‧‧‧」
「そうね‧‧私もそんな相手が欲しいな‧‧‧」
僕も加持さんのように、信じ合える相手が欲しいなんて思ってた。
その顏を思い浮かべていたら‧‧‧もうそれが身近に居るんじゃないかって思えてき
て。
「どうしたの? 默っちゃって‧‧‧」
だから綾波に顏をのぞき丢まれたとき少し焦ってしまったわけで‧‧‧
to be continued.
次回予告
アスカに映畫に誘われたシンジ。
だけどレイまで一緒に行くことになって、何かありそうな予感。
第11話 映畫へ行こう!!
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