[轉貼] 菅野よう子 X ツッチー 對談 (天國之扉)
原文連結
http://www.cowboybebop.org/bigshot/special/02/
人物簡介:
菅野よう子
早稲田大学在学中に“てつ100%”のメンバーとしてデビュー。解散後は、
作曲・アレンジを中心に活動し、TVCMでも数々の話題作に参加して各賞に輝く。
TV・映画や、今井美樹、小泉今日子などのCDにも参加している。アニメーション
は「MACROSS PLUS」「天空のエスカフローネ」「ブレンパワード」など。
ツッチー
シャカゾンビのDJ兼トラックメイカー。'94年、ラッパーのオースミとヒデボウイ
と共にシャカゾンビとして活動開始。独特の質感を伴った繊細な音づくりには
定評がある。シャカゾンビとして「HERO THE S.Z.」(CTCR-14082)
「JOURNY OF FORSIGHT」(CTCR-14134)の2枚のアルバムのほか、
リミックスアルバム「S-SENCE 2000」(CTCR-14152)がある。
ビバップのメインスタッフたちが登場するスペシャル企画。お待ちかね、菅野よう子
さんの登場です。しかも今回はなんと! 幻のTV版最終話、セッションXX
「よせあつめブルース」でただ一度だけ「菅野さん以外のビバップ音楽」としてその
楽曲が使われたDJ、シャカゾンビのDJツッチーさんとの対談です。例によって脱線に
次ぐ脱線、しかも相当専門的な話にまで及びますが、「天才肌の作曲家」と「繊細な
DJ」との音楽観の違い、あるいは共通するコダワリなどが垣間見えて、なかなか興味
深いものになってますよ。
--- そもそも2人が初めて会ったのはいつ頃でしたっけ?
菅 野 「TVの最終回のときにツッチーさんとシャカゾンビの音楽を使ったというの
が最初ですよね。それまで私はシャカゾンビって知らなかったんだけど、聴いていいな
って思って、シートベルツのライヴ('99年8月)のときに何か一緒にできないかなっ
ていって、打ち合わせをするために会いに行って……三宿(東京)のクラブでDJをやっ
てるっていうから行ったのね。オレ(編注・一応説明しておくと菅野よう子はときおり
一人称が“オレ”になる)、DJってなんのことかわからなくて、クラブ行ったことなく
て、初めて行って、あれ以来行ってない(笑)」
--- 菅野さんってあんまり夜は出歩かないんですか?
菅 野 「ていうか、オレお酒飲めないし、そもそも遊ぶって一体何をしたらいいん
でしょう?みたいな感じでわからなくて。DJとかには興味津々だったんだけど、全然何
してるかわからなくて。で、行って、ツッチーさんが回すまでずっと黙って待ってて、
ツッチーさんが回し始めてから、いわゆるフロアーに初めて行ってみたらですね、なん
かお触りするオジサンがいたんですよ」
ツッチー 「ええっ!?」
菅 野 「その話ししたの、覚えてない?」
ツッチー 「あ、なんかそういう話聞いたのは覚えてるかも」
菅 野 「痴漢がいたの」
--- マジですか?
菅 野 「マジで。サラリーマンみたいな人だったんだけど、女の子に抱きつくのね
。オレをはじめとして。もう酔っぱらってて、グターっとしてるんだけど、それをツッ
チーさんは曲で煽るのよ(笑)」
ツッチー 「いやいやいやいや。煽ってない煽ってない。別にエロい曲とかかけてない
し」
菅 野 「あとでさ、『なんか変なオヤジがいたから煽っちゃった』って言ってたも
ん」
ツッチー 「ハハハハハハ(笑)」
菅 野 「でね、その人女の子に抱きついてばっかいて、『すっごいイヤな奴!』と
か思って、こんなとこきてなんで私が酔っぱらいの相手しなきゃいけないんだ、とか思
って」
--- 最悪のクラブデビューですね。
菅 野 「もう最悪。ただそのとき初めて、こういうカルチャーがあるんだなってい
うのはわかった。夜な夜なこんなことしてる人たちがいるんだなって」
--- ツッチーさんが最初にこの作品に関わったのは、TV版の最終話で使いたいって
いうオファーからですよね。
ツッチー 「ですね。そう、突然だったんですよ。で、俺的にはもう、全然使って下さ
いっていう感じだったんで」
--- 実際映像になって見たとき、どう思いました?
ツッチー 「うーんとね、よくうまく絵にはめてくれたな、という感じ。自分的には絵
とかをまったく意識しないでつくってた曲なわけだから。それを聴いた監督が、ああい
う映像にはめてくれたというのは面白い体験でしたね。で、あのですね、それもオレに
とって“ヒップホップの一貫”っていう感じなんですよ。ラップだけじゃない何かが音
に乗っかってる、というのが。基本的に、自分のつくったものを広げてくれる人が常に
いて、という感じで曲作ってるから。常に、なるべく自分だけで自己完結しないように
してるんですよ」
菅 野 「わざわざしないようにしてるの?」
ツッチー 「そうですね」
菅 野 「えらい! でもなんか、わかる。隙間残しておく、というのは」
ツッチー 「そこまでガッチリつくり込むほど自信もないし、自分の作品に責任がもて
ない……っていうとアレな言いかただけど、『ここまではつくったけど、その判断なり
、ここから広げていくのは聴く人に任せる』というか。じゃないとね、ゴリ押しになる
から。性格的にもあんまりゴリ押しができないんですよ」
菅 野 「優しいのよ、きっとそれ。あとさ、あの曲(『よせあつめブルース』の最
後にかかるシャカゾンビ“空を取り戻した日”)って特に思い入れがあるとか、例えば
一番最初につくった、とかあるの?」
ツッチー 「そういうわけでもないですけど、あれは実は結構昔からあった曲なんです
よ。別のラップが入ってるデモ・ヴァージョンみたいなのもあって、それはカセットテ
ープだけで配ってたりとかしてて。で、それから俺らもぼちぼちCD出すようになって、
いざアルバムをつくるってなったときに、あれをメインにして曲をつくろうか、ってつ
くったんですよ」
菅 野 「ああいう曲ってさ、何が最初にできるの? つまり、バックトラックが最
初にあって、そこにいろいろラップを乗せていって、詩もどんどん変わっていって、っ
て感じなの?」
ツッチー 「まあ、つくりかたはさまざまなんですけどね」
菅 野 「あの曲に関しては?」
ツッチー 「あれは、とりあえずオースミ君(シャカゾンビのラッパー)が『この曲で
ラップしたい』って言ったのかな、確か」
--- お互い、たぶん曲のつくりかたは全然違うんじゃないですか?
菅 野 「だって、ひとりでつくったことないでしょ? みんなでつくるんでしょ?
」
ツッチー 「まあそうですね。歌詞が乗るものに関しては、とりあえずバックトラック
だけをつくっていって、聴いてもらって、ほかのメンバーが『これがいい』って言った
ら、それにリリックを書いてもらって乗っけて、っていう感じですね」
菅 野 「たとえば10個とか5個とかトラックを上げて、メンバーに聴かせて『あれ
がいいこれがいい』って言ってもらって、それから詞を書いて、って感じ?」
ツッチー 「そうですね……あと、一応なんとなく注文はくるんですよ。漠然としたイ
メージで」
菅 野 「例えば?」
ツッチー 「『速い曲』とか(笑)」
菅 野 「そんだけかい! あとは『かわいい曲』とか『悲しい曲』とか? そのと
きには詞のもとはないの?」
ツッチー 「ないですね」
--- じゃあ、“空を取り戻した日”はまったくトラックが先?
ツッチー 「あれはそうですね」
菅 野 「それで詩がきて音を足したり引いたりして……その、最初にその人をイン
スパイアしたトラックっていうのはいじらないでおくの? 全然変えちゃって『こっち
にしましょう』っていうのはないの?」
ツッチー 「それはないですね」
菅 野 「エライ!(笑) エライよね」
ツッチー 「うーん、どうなんでしょう?」
菅 野 「私さ、曲書いてさ、詞がくるじゃん。アレンジ全部変えちゃったりするも
ん」
ツッチー 「え~!(笑)」
--- ツッチーさんがビバップのイメージみたいなのをつかんだのはいつごろですか
?
ツッチー 「ビデオを見せて頂いたりしてたし、リアルタイムで放送もしてたから、TV
の最終話とかスタジオで見てましたよ。『コレコレ!』なんて。で、それからイヴェン
トの話がきて、そんなに詳しくはないけど、ネタとしてジャズとかは買ってたりしてた
から……なんかまあ、(菅野さんの音楽は)自分に近い、とか言っちゃうと失礼かもし
れないですけど、でも本質的な部分では近いものを感じてました」
菅 野 「私はね、クラブでツッチーさんのDJを初めて聴いたとき、ほかにもあのと
き何人かいたでしょう? で、ほかの人がDJしてる間、ずっと『ツッチーさんまだかな
』って待ってて、でツッチーさんに代わってから……なんかオトナっぽかった」
ツッチー 「おお」
菅 野 「その夜にいた3~4人を聴き比べただけだから偉そうなことは言えないけ
ど、ツッチーさんのDJはオトナっぽかった。それはセクシーとかじゃなくて(笑)、な
んだろう、一歩引いてるというか、とにかくオトナな感じがしたのね。都会派? いや
、それはウソ(笑)。うーん、なんて言えばいいんだろう? ジャンルとかあるのかわ
からないし、オレが言ってるのが正しいのかどうかもわからないけど、なんかまあ、と
にかく田舎では決してなくて、もの凄く都会的で、しかもムーディではなくて、ちょっ
とだけ引いてて、つかず離れず、というか。煽り系とか、私はあんまり下品で好きじゃ
ないんだけど、なんかね、ちょっとIQ高いっていうか、わかりにくさとわかりやすさの
ギリギリのところが、非常にビバップくさいな、と」
--- ほうほう。
菅 野 「なんかさ、下品にわかりやすく、パンツ見せたりとかさ(笑)、内臓ドバ
ー!とかしないじゃない? そこが凄くビバップっぽいなと思ってさ。もしそのときに
違う感じだったら、違う人に頼もう、って言ったと思うし」
ツッチー 「ビバップという物語自体、1話ごとに、何かしら切なくないですか? 俺
、結構切ないの好きなんで」
菅 野 「例えば?」
ツッチー 「音楽もそうだし……」
菅 野 「ビバップだったらどの話が好き?」
ツッチー 「うーん……どの回というよりも、毎回ラストで、切ないというか、グッと
くることが多いじゃないですか、後半の話とか特に。地上波で流れなかった回とか。普
通にハッピーエンドじゃなくて」
菅 野 「音楽も切ないの好きなの? それとも切なくさせたいの?」
ツッチー 「切なくなりたいですね(笑)」
菅 野 「でも、ウルウルなのは嫌だったりする?」
ツッチー 「いや……泣くこととかありますよ。なんかね、高校生のころ付き合ってた
コに振られたりとかね」
菅 野 「それは違うじゃん(笑)」
ツッチー 「あ、それは別か。でも何かしら自分が思ってるときに、そういう曲が流れ
たりすると、こうホロっと……そんなに自分に酔ってるわけじゃないんですけど」
菅 野 「ロマンチストなんだ」
ツッチー 「いや……それは……どうかな?」
--- ツッチーさんはビバップのサントラとかリミックス盤も聴いてると思うんです
けど、その感想とかは?
ツッチー 「うーん、なんというか、音楽をつくる側としては、自分の中でイメージを
持ちながらつくってるから、結構みんな、サントラとかつくってみたかったりすると思
うんですよね。で、ラップの話に戻っちゃうんですけど、バックトラックをつくるとき
には、俺はその時点ではあんまり思い入れを強く入れないんですよ。そこにラップで表
現するのはMCの2人だから、そこの表現はお任せするというか。あんまり自分の思い入
れが強いと、ただ単に自分の曲になっちゃいますからね。逆に1人でつくるときはガッ
チリ思い入れますけど。でも、そのときのイメージは漠然としたものなんですけどね。
で……菅野さんの場合、それをちゃんと映像で表現できて、なおかつそれが映像とシン
クロされてて、何だかすごい羨ましかったですよ」
--- ツッチーさんってサントラ結構買ったりします?
ツッチー 「昔、渋谷のサントラの専門店でバイトしてたことがあるんですよ。『フロ
ムA』かなんかでバイト探してて、『レコード屋だ!』と思って面接行って受かったん
ですけど、でもそれまでは別にサントラとか聴いたことなくて。その店がそういう所だ
と知らずに行ったんですよ」
--- それは凄いっすね。
ツッチー 「それで2年か3年働いたんですけど、やっぱりそれで映画なり映像なりに
付随する音楽、こういうものがあるというのを知って、それからちょっと音楽の聴きか
たは変わりましたね」
菅 野 「好きなサントラは?」
ツッチー 「『リトルマン・テイト』(91年米)って知ってます?」
菅 野 「ジョディ・フォスターのやつ?」
ツッチー 「そう、ジョディ・フォスターがお母さん役で、すごいIQの高い子供がいて
、ってやつ。そのサントラがいいんですよ」
--- 普通、サントラって映画に合わせてつくるじゃないですか。その意味では、ビ
バップのサントラってちょっと普通の映画とは違いますよね。
菅 野 「私もあんまり詳しくはないけど、そういうつくりかたをしてる人は何人か
いるらしくて。ガブリエル・ヤレっていう人(フランスの作曲家。『イングリッシュ・
ペイシェント』でアカデミー賞受賞)は、そうなんだって」
ツッチー 「へぇ」
菅 野 「映画を見もしないで3曲か4曲かつくって、その曲のヴァージョン違いを
10個ずつくらいつくるんだって。例えば“なんとかさんのテーマ”っていうのをつくっ
たら、それの『悲しいヴァージョン』、『楽しいヴァージョン』とかって。で、それを
監督に渡して、監督がその音楽に合わせて映像をつくるんだって。だからあの人に頼ん
で曲書いてもらったのに、監督が『こんなの使えない』ってボツにして、ほかの人に回
ったのもいっぱいあるらしいんだけど(笑)」
ツッチー 「結構サントラって、メインのテーマがあったら、それのバージョン違いが
いっぱいあるって感じですよね」
菅 野 「でもそれもさ、シーンに合わせて『しんみりした場面だからしんみりした
アレンジで』とかやるんだけど、ガブリエル・ヤレさんの場合は、先に『悲しそうなシ
ーン1・2・3』とかつくっちゃうらしい。撮影に入る前とかにつくっちゃうらしいよ
」
--- 菅野さんはそういう意味では一応、監督の発注に合わせてつくる……。
菅 野 「いいえ」
--- …………一応発注は聞くけど、無視すると(笑)
菅 野 「なんでガブリエルさんの話を覚えていたかというと、『なんだ、じゃあい
いんじゃん』って思ったから(笑)。今度から依頼が来たら必ずその話をしようと思っ
て(笑)。『あの人もそうなんですよ』って」
--- (ツッチーさんに)この人は本当に発注どおりにつくらない人なんですよ。例
えば今回の映画だと、頼まれた歌ものが1~2曲で、でも実際つくったのは……。
菅 野 「12曲くらい(笑)。インスト1曲もないの。そのかわり無駄撃ちもいっぱ
いしてて、使われない曲とかもいっぱいあるよ。しょうがないけどね」
--- ツッチーさんは最近、シャカとかで生音とか使い始めてるじゃないですか。ど
うですか、そのへんは?
ツッチー 「いや、実は前からやってたんですよ」
--- バンドやってたんでしたっけ?
ツッチー 「バンドは、これからやります(笑)」
菅 野 「シャカとは別に?」
ツッチー 「うん」
菅 野 「どんな?」
ツッチー 「まだ何も決まってないんですけど……」
--- 楽器は何かできるんでしたっけ?
ツッチー 「できないっすよ」
菅 野 「そんなニコニコして」
ツッチー 「いやでも、前から生で(ドラムを)叩いてもらったやつをサンプリングし
て組み直してたりとかしてたし。丸々全部弾いてもらうっていうのはやってなかったけ
ど、音源を使って弾いて、というのはやってたんですよ」
--- 「Get On Da Track」を聴くと、音楽性がいよいよ広がってますよね。
ツッチー 「収拾つかないっすよ(笑)。でも、ストリングス以外は全部音源です」
--- ノー・サンプリング?
ツッチー 「これに関してはそうですね」
--- サンプリングは最近あんまりしてないんですか?
ツッチー 「いや、してますよ。何かしらリズムのパートのどっか、とか。スネアだけ
、とか」
菅 野 「サンプリングってさ、曲があってからするの、それとも毎日しとくの?」
ツッチー 「うーん……曲つくろっかな、って思ってからですね」
菅 野 「じゃあネタなんだね、完全に」
ツッチー 「そうですね。ネタ帳とかあります?」
菅 野 「ネタ帳というか、メロディの切れ端帳はあるよ」
--- 紙に書くんですか?
菅 野 「うん。2小節とか、ちょろちょろっとね。どこに書いたかわかんなくなっ
ちゃったりするけど。あと、本当に何にもないときは留守電に入れたりとか。五線紙が
あるときは音符で書くけど、ないときは『ド、ソ……』とか書いたりとか(笑)。あと
で『なんだっけこれ?』とか思ったりするんだけど(笑)」
--- だれかICレコーダーをプレゼントしてあげて下さい(笑)。菅野さんはピアノ
習ってたんでしたっけ?
菅 野 「習ってたというか、あった、うちに。あとは自己流で。3歳ぐらいのとき
に親に買ってもらって」
--- 物心ついたときには弾いてた?
菅 野 「つくってた。歌とかつくって、それをなんとなく弾いてた」
--- じゃあ子供のころから普通に曲つくってたんだ。
菅 野 「小学校のときとかはリコーダーの授業つまんなくて、自分でアレンジした
曲を吹いてた。すっごいイヤだったと思う、その先生(笑)。教科書に載ってる曲を勝
手にアレンジしてみんなで吹いてたから」
--- ブラスバンド部とかには入ってたんですか?
菅 野 「ブラスバンドでも勝手にアレンジしてた(笑)。だってロクな譜面ないじ
ゃん。歌謡曲とかさ。でもやっぱり『ルパン3世のテーマ』とか吹きたいじゃん(笑)
。でも譜面なんか売ってないから、だから勝手にアレンジしてやってた」
--- 先生にしたらイヤな生徒ですね。
菅 野 「だったと思う」
ツッチー 「D.I.Y.精神ですね」
--- ツッチーさんは自分でつくり始めたのっていつごろですか?
ツッチー 「ターンテーブル買ってからですね。なんか高校のときには学校でバンド組
んで遊んでたりはしてましたけど。まあ、コピーでしたけどね」
--- パートは?
ツッチー 「そのときはね……歌わされてました」
菅 野 「おおっ!」
--- フロントマンだったんですね。
ツッチー 「フロントマン、やらされてましたねぇ」
菅 野 「どんなコピーしてたの?」
ツッチー 「かっこいいとこだと、ツェッペリンの“Rockn' Roll”とか」
菅 野 「かっこわるいとこだと?」
ツッチー 「聖飢魔IIとか」
--- ワハハハハハ!
ツッチー 「C.C.B.もやりました」
菅 野 「かっこわりー!!(笑)。一番かっこよくて、でもツェッペリン?」
ツッチー 「クワイエット・ライオットとか。そのころちょうどメタルが全盛期だった
から。で、そのあとぐらいからかな? インディブームっていうか、バンドブームが始
まったのが。で、ちょうどそのぐらいのときにランDMCと出会って、こういうのがやり
たいなと」
--- 音をつくり始めたのは?
ツッチー 「なんかね、その当時ビーツ・インターナショナル、つまりノーマン・クッ
クの立ち位置っていうのがすごい好きで。裏方なんだけどでも個性がちゃんと打ち出さ
れてる、という。それがキッカケかも知れない」
菅 野 「そういうの聴き出してから、聖飢魔IIはどうなったの?(笑)」
ツッチー 「なんかね、高校卒業して専門学校入ったときにターンテーブル買って、と
りあえずオリジナルテープつくるのが流行って。車でどっか遊びに行くときは必ずテー
プ持っていく、みたいな感じで。で、なぜか、何かしら笑わせなきゃいけない、みたい
なのがあって(笑)。最初はバーっといい曲が並んでて、だんだんおかしくなってくる
という、そういうテープのときによく使ってましたね、聖飢魔II(笑)。で、それから
専門学校出るくらいにサンプラー買ったんですよ。結局、曲のつくりかたは当時からま
ったく変わってないですね。プラモデル組み立てるぐらいのノリで音楽つくってるんで
すよ」
菅 野 「じゃあ最初からこんな感じなんだ。大人っぽい感じ」
ツッチー 「まあそうですかね」
--- 菅野さんの曲のつくりかたもすごいですよね。ドラムン・ベースみたいな曲で
も、全部頭から展開考えてつくっていくんですよね?
菅 野 「だからヒドイよ、その途中経過見ると。1曲5分の曲をつくるとすると、
まず一応、最初っから最後までピアノをバーッと入れるわけ。で、一応リズムの雰囲気
がわかるようにハットとベードラ入れるよね。そうしたら、飽きたからって突然シンセ
をピョッと入れるわけ。で、歌の人がその日しかこれないってなると、歌入れちゃった
りして。そのあとにスネアとか入れはじめたりして。オレの中では全部できてるものを
並べてるだけなんだけど、エンジニアの人はどういう曲になるのか全然わかんないみた
いで(笑)。すごいやりにくい思う」
--- そういう作曲方法の人ってそんなにいないですよね?
菅 野 「どうなんだろう……でもオレ、それしかできないんだもん。あとで抜こう
かな、とかはできない。(ツッチーさんに向かって)それってアドリブみたいな感じ?
ここ抜こうかな、とかは?」
ツッチー 「まあでも、なんとなく抜く場所とかは考えてて、それを聴きながら『じゃ
あここ抜いてみようか』とかそういう感じ。一日中同じループ聴いてる人とか結構いま
すよ。俺も3日とかループ回しっぱなしのときとかあるし」
菅 野 「マジで? 寝てる間とかも?」
ツッチー 「そう」
菅 野 「なんで? 気持ちいいかどうか確かめるの?」
ツッチー 「そうですね。それでちょっとずついじったり」
菅 野 「へぇぇ。外人もそういうことしてんの?」
ツッチー 「そうみたいですよ」
--- 菅野さんは自分で機材いじったりします?
菅 野 「しません。まったくしません」
--- それはわからないから?
菅 野 「わからないから。やってみようかな、と思った瞬間はあるんだけど、向い
てねぇや、とか思って。買ったけど箱から出さなかったり」
--- すごいことしてますね、それ。
菅 野 「マックもね、ないとマズイかなと思って買って、2年間箱に入れっぱなし
」
ツッチー 「はははははは」
--- パソコン2年間ほっといたらメチャクチャ古くなりますよ、それ。
菅 野 「そう。でも私わからないから、そんなこともさ。雑誌とかも見てないし。
でまあ、電化製品って昔10年ぐらい平気だったじゃない。冷蔵庫とか。だからマックも
4~5年は平気だと思ってたら……もうダメなのね」
--- 菅野さんはサンプリング系の音は自分で録るんですか?
菅 野 「違う。『こういう音色でこういうパターン』って説明して、それを探させ
る」
--- 大変だ……。あの“Piano Black”のイントロの音とかは?
菅 野 「あれ、バイクの音だよ。スターターの音。あれはなんだったけな、いろい
ろ説明したんだけどなかなか無くて、バイクのチャカボコした音を見つけて『あ、それ
でいいや』って音抜いて、それで加工して」
--- それ、なんかヒップホップの人っぽいつくりかたですよね。
菅 野 「ただ、音は基本的には『こういう音がいい』って説明して、その場でオペ
レーターの人に探してもらうんだけど。例えばSE集とかサンブリングCDとか。無ければ
そのときに机叩いて音録ったりするし。それでだいたいひとつの音を探すのに50個とか
100個くらい出してもらうかな。例えば『“シィー”って音なんだけど、その音のちょ
っと前に“ギィ”っていう音がちょっとだけかかってる“シィー”の音』、とか言うじ
ゃない。それに対して50個ぐらい探してもらう」
ツッチー 「すげー……」
--- それは……大変だ。
菅 野 「マニュピレーターの人は大変だと思う。『この音じゃないんだけど、あえ
て言うならこの音のここのところのここの部分は採用で、あとは全然いらない!』とか
。大変だと思うよ。このわけのわからない言語を理解して、しかもさ、最近わかったん
だけど、一個ずつの音が思ったとおりの音でも、それぞれ集まるとまた違って聴こえた
りするじゃない?」
ツッチー 「はいはい」
菅 野 「それが最初わからないからさ、好きな音だけを集めてやったりしてたんだ
けど……音一個は確かにそうなんだけど、並べるととなんかこうじゃないんだけどなぁ
、ってすごい思ってたのを、優秀なマニピュレーターの人が『大丈夫大丈夫、やってお
くから』ってしてくれるようになってから、だいぶ楽になった。でも、時間かかります
よ。生でやったほうが全然ラク。生のブラスなんか、ビバップだと1日1曲録れるから
。でもシンセものだと1日1曲はちょっと厳しい」
--- 1日音1個決めるのがやっと、とか?
菅 野 「うん。本当、そういう感じ」
--- きっつー……。
菅 野 「でも、それは大事なところだけだけどね。でも“Piano Black”だったら、
あのイントロがないと成立しないから、そういうのはすごい探したりする。しろって言
われたらできないよね、きっと。できるかな? 人に言われるんだよね」
ツッチー 「そうっすねえ……俺、マニピュレーターとかもちょっとやってたんで……
その人の気持ちはちょっとだけわかるかも。少なくともかなりスキル・アップはすると
思いますね(笑)。例えばあるアーティストの場合とかだと、最初にサンプラーでデモ
をつくってくるんですよ。で、それをとりあえず忠実に再現しなきゃいけなくて……ま
ずなぞるところから始まるんですよ。サンプリングするときに、レコードの頭を手で押
さえてて、ボタンを押してレコードからパッと手を離した瞬間のレコードの立ち上がり
のもたつきまで再現する、ぐらいの感じなんですよ」
--- それもキツイなぁ。
菅 野 「でも、わかるそれ。そのもたつきが大切なんだもんね、きっと」
ツッチー 「持ってきて人からすれば、このもたつきとかも踏まえたうえでの1曲だか
ら。そうしてあげなければ」
--- 菅野さんは、エンジニアは薮原正史さんですよね。
菅 野 「そう。知らなかったんだけどね。なんかの雑誌に『ダブで有名な薮原さん
』とか書いてあって『えっ?』とか思って」
--- フィッシュマンズとかやってましたよね。
菅 野 「あとコーザ・ノストラとか。で、そういう人にクラシックっぽい曲とかや
らせるじゃん。それがおもしろいんだよね。オレ、基本的に太い音が好きなんだけど、
太い音を太いまま上品にやるとすごく暗くなっちゃったりするというか。インナーにこ
もるから。でも薮ちゃんってあんまりそういうの無いんだよね。淡々としてる人なんで
、太かろうか細かろうがキーキーしてようが、淡々としてる。それの相性が合うんだろ
うね」
--- 前から聞いてみたかったんですけど、普通にラジオとか聴いてても、DJの人と
かだとつい「あ、ここはサンプリングできるな」って思っちゃう、とかいう話あるじゃ
ないですか。純粋な聴きかたができない、というか。そういうのってお互いあります?
ツッチー 「うーん、昔はあったっすね。でも最近やめました。レコードを素材として
買わなくなったんですよ。去年ぐらいとかに、サンブリングしてストックしてあったデ
ータを全部マルチ・テープに流し込んだんですよ。で、とりあえず吐き出すものは吐き
出して、逆に自分でつくったフレーズとかをループさせたりとか始めてて。で、そうい
うやりかたを始めたら、そういう聴きかたはしなくなりましたね」
菅 野 「あのさ、音楽でさ、『まったりしたいとき用』とかあるの?」
ツッチー 「ありますよ」
--- 菅野さんはあります?
菅 野 「音楽に限らず、音一般すべてに関して、耳を閉じるか、そうでなきゃ全部
入ってくるか、になっちゃうから、ない。だって音楽だけじゃないから。踏切の音とか
騒音とか含めて、『この音、Aマイナーみたいだけどなんかズレてんなー』とか思っち
ゃう」
--- あの、菅野さんって絶対音感の人ですか?
菅 野 「そうみたい」
--- あ、やっぱりそうなんだ。
菅 野 「お皿運んでガチャっていったら、『あ、ミって言った』とか思っちゃうか
らさ」
--- それはツラいなー。
菅 野 「いや、言葉と一緒でさ、英語がちょっとわかる人って英語の会話を聞き流
せなくてつい聞いちゃったりするじゃない? そういうときって、自分の考えに入り込
むか、もしくは聴き込むか、どっちかじゃない? それが私の場合、音楽に限らず、パ
チンコの音とかも全部一緒だから。だから家でなにかを聴くとかは一切できないし」
--- じゃあ家は無音なんですか?
菅 野 「基本的には」
--- すごいっすねぇ…………あ、渡辺監督!(たまたま近くで飲んでいた渡辺監督
をつかまえて)ちょうどいいんで、ビバップのTVの最終回でツッチーさんのインストを
使おうと思った理由を教えて下さいよ。
渡 辺 「もう忘れました」
--- …………。
渡 辺 「えっとね、酔っぱらってますけどいいですか?」
--- いいですよ。ツッチーさんのあのシングル、普通に買って聴いてたんですよね
?(「よせあつめブルース」で使われたインストはすべて「GET A POINT」レーベルか
らリリースされたアナログ・シングルに収録されている←現在は廃盤)。
渡 辺 「もちろん。大好きだったんで。えっと、『よせあつめブルース』はビバッ
プであってビバップではないものをつくろうとしたので、あれに菅野さんの曲をつける
とビバップになってしまうので、違うものをつけようと思って、当時もっとも好きだっ
た、って過去形で言うとアレだな(笑)、いまも好きなんですけど、ツッチーさんの曲
と、シャカゾンビのあの曲が自分の心情的にも当てはまるものだったんで、それを是非
使いたいと打診して、最初はいろんな人に反対されたんですが(笑)、最後はOKになっ
てよかったと」
--- とりあえず、よくあのシングル買ってましたね。
渡 辺 「シャカの曲はもちろん、ツッチーさんのリミックスしたものまで買ったり
してましたからね。篠原ともえまで(笑)」
ツッチー 「マジですか?」
--- やってましたね、そう言えば。
渡 辺 「で、唄はいらないんで、インストだけ聴くと(笑)。ツッチーさんの場合
、曲もいいんですけど、例えばスネアの音がいいとか、そういう聴きかたもしてますね
、僕は」
菅 野 「じゃあオレの曲でツッチーさんのスネアだと……」
渡 辺 「ああ、僕にとっては最高(笑)」
--- じゃあツッチーさん、マニピュレーターとしてどうですか? きつい職場だと
思いますけど。
ツッチー 「きついっすよねぇ(笑)」
渡 辺 「菅野さんの打ち込みって誰がやってるんですか?」
菅 野 「浦田さんっていう人なんだけど、もう50歳ぐらいの人で」
--- そんな人に1個の音決めるのに50個出せ、とか言ってるんですか。
渡 辺 「ひょっとして大御所なのでは?」
菅 野 「YMOとかやってた松武(秀樹。YMO第4のメンバーとして有名)さんとか、
あの辺と同じくらいらしい」
渡 辺&ツッチー 「え~!!」
--- ということはパイオニアじゃないっすか! 菅野さんすごいっすよ。
渡 辺 「凄い人をコキ使ってることが判明(笑)」
菅 野 「でも、凄いイイ人だよ。オレのわけわかんない注文も何でも聞いてくれる
し。全然怒らないし。あといっぱい音持ってるし」
渡 辺 「劇場版でも音効で頼む予定なんですよ」
菅 野 「不思議なんだけど、『怖い音』っていうと、その人100個くらい持ってるの
。私はたぶん、『怖い音』っていったら2個ぐらいしかない(笑)。でも私は『面白い
音』って言ったら100個くらいできるんだけど、その人はたぶん2つぐらいしかできな
い(笑)。とにかく怖い音が好きな人なのよ。一音で人を落ち込ませることができるっ
て言ってる。一音で自殺したくなる気持ちになるとか、一音で怒らせるとかできるんだ
って。それくらいすごい。私の場合、一音で笑かすっていうのならできるけど(笑)」
渡 辺 「劇場版では聴いてて頭がオカシクなるような曲を発注する予定なんですけ
ど(笑)、それを劇場でガンガンにかけまくるという。まあ、ほどほどにしろとは言わ
れてるんですが(笑)。じゃあ、グッバイ」(と言って、去る)
--- じゃあ最後にツッチーさん、劇場版の音楽に期待することはありますか?
菅 野 「そんなものあるかい!」
ツッチー 「うーん……本当、でも、ないっすよ。楽しみなだけで」
菅 野 「じゃあ、俺がつくるなら、っていうのは?」
ツッチー 「ええっ? そうだなぁ……」
菅 野 「シャカとは違う?」
ツッチー 「かも知れないっすね」
菅 野 「生楽器使うとか使わないとか、もっと暗い感じとか、暴力的な感じ、とか
」
ツッチー 「あ、暴力的な感じというのはないかな」
菅 野 「切ない?」
ツッチー 「やっぱりそうですね。悲しいというか、切なさ」
菅 野 「キュンとくる?」
ツッチー 「キュンとくるやつ。やりたいですねぇ」
菅 野 「あのインストとかはどうだったの?」
ツッチー 「あれはね、完全に自分のカラーですね」
菅 野 「じゃあ、ああいう感じだ。なんか意外にさ、コード感があるよね。普通、
ヒップホップ系の人って、無責任に『ドミソ!』ってバーンってやる人が多いような気
がするんだけど、でも、ツッチーさんは凄い繊細だよね。『ドミソ!』っていうのは絶
対ないじゃん」
ツッチー 「マイナーコード系なんで」
菅 野 「いやでもさ、マイナーだからって『ラドミ』ってわけじゃなくてさ。なん
かこう、不安定というか割り切れてないところを狙って狙って狙って……という感じが
するよ」
ツッチー 「そうでもないんですけどね。単に自分にとって気持ちいい音というか」
菅 野 「でも、その気持ちいいとこっていうか、カラーというか、それにはこだわ
るでしょう? なかなかね、ヒップホップのそういうのってない気がするから。そこだ
よね、大人な感じっていうのは。普通はもっと割り切れてるもん、明るいか暗いか」
--- 極端なものは多いですよね、確かに。
菅 野 「ツッチーさんの場合はね、ジャズっぽいというのはと違うんだけど……も
しかしたら、それこそクラシックっぽいぐらい、和音に気が利いてる」
--- ほおほお。
ツッチー 「自分では全然わかってないですけどね(笑)。去年の夏くらいに初めて分
数コードとか知りましたから」
菅 野 「あ、そうなんだ。でも別にそれも含めて入ってて、気持ちよさげなセオリ
ーとかがちゃんとあって、美意識みたいなのがあって。クレヴァーですよ」
--- 理論的に裏付けできるようなことを、自然とやってるんでしょうね。
菅 野 「そうだろうね」
ツッチー 「それがね、自分がいままでレコードなりCDで聴いてきたものが出てるって
いうことでしょうね」
菅 野 「聖飢魔IIは違うと思うけど(笑)」
ツッチー 「一応ちゃんとメイクまでしてたんですよ(笑)」
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